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2007.08.31 映画 012
Inland Empire (2006)
インランド・エンパイア


大傑作『マルホランド・ドライブ』から五年。
超待望、デイヴィッド・リンチの新作が遂に完成です!
本当に待ちに待ちました。
恵比寿に観に行った日は猛暑でしたが、
午前中にも関わらずかなりの人。
180分という長編でしたが
リンチ・ワールドには更に磨きがかかっており、
脳内はぐにゃぐにゃで爆発寸前、
正に三時間の陶酔でした。
いや、余韻を考えるとそれ以上でしょうか。
観た後は三日位全然頭が働かなくて参りました笑
所謂リンチ病に侵されてしまったわけです。

ニッキー・グレースはハリウッド女優。
夫で町の実力者ピオトルケ・クロールと豪邸に暮らしていました。
彼女は再起を賭け
『暗い明日の空の上で』という映画に出演することに。
ところがこの映画は、
ジプシーの民話を基にしたポーランド映画『47』のリメイクで、
主演の二人が撮影中に殺されたので
未完になったといういわく付きの企画でした。
ニッキーは共演者のデヴォンと意気投合、
映画のストーリーとリンクするように
プライベートでも不倫をしてしまい、
遂には現実と映画の区別が付かなくなって…。

『イレイザーヘッド』や『ロスト・ハイウェイ』等で
経験を積んだから、
今作こそは一回で全て理解できると思ってたんですが
全然甘かったです笑
幾つもの世界が様々な時間軸で展開していき、
頭はもう村上直樹状態でぷすぷすとなっていました…。
しかしリンチ監督ご本人も言っているように
文学的・哲学的解釈云々よりも映画自体を楽しめればいいわけで。
かなりお腹一杯にさせてもらいました。
僕も含め世界中のリンチ病患者は皆狂喜したことでしょう。
歴史に名の残る大傑作の誕生です!
リピートは必須ですね。
最後にRolling Stoneが珍しくいいコメントだったので載せておきます。
正にこの通り!

『インランド・エンパイア』は、
人の心を変えてしまうくらいの強烈な副作用を持った劇薬である
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2007.08.19 映画 011
蛇娘と白髪魔 (1968)


昔の邦画、
特にホラーは「奇怪」の二文字がすごく似合っていると思います。
それは日本独特の湿気が生み出すのか、
細かい特撮や特殊メイク技術のお陰なのか分かりませんが、
とにかくぬめっとした恐怖がありますよね。
ましてや原作が楳図かずお先生とくれば
恐ろしくないわけがありません。
映画自体は楳図漫画をミックスしたものですが、
後に同名の作品を執筆されています。
漫画→映画→漫画という経緯を持つ異色作です。
楳図先生の魅力をしっかり映像化した怪作!
御本人もタクシー運転手でカメオ出演。
怖いです笑

孤児院に引き取られていた小百合は、
生き別れになっていた両親と再会し
やっと自分の家に戻ることができました。
しかし家には姉だと名乗る不気味な少女・タマミがいました。
ある朝小百合が目を覚ますと、
一緒に寝ていたタマミのあとには蛇の鱗が…。
「お姉さんは蛇なのかしら…?」

「蛇よ!お姉さんは蛇よ!」
この台詞はいいですね~。
モノクロの映像も漫画から飛び出たようでバッチリ決まってました。
特撮もまぁ今観ればチープな感じがしますが、
だからこその迫力がありますよね。
白髪魔登場シーンの何と奇怪なこと!
デジタルニューマスター版でのDVDリリースは嬉しい限りです。
大映の底力が存分に楽しめる作品。
楳図かずおの恐怖世界を映像でも堪能してみてはいかがでしょう!
2007.08.12 映画 010
東海道四谷怪談 (1959)
tokaido_yotuya_kaidan.jpg

オカルト映画とかゾンビ映画とか、
ジャパニーズ・ホラーとか色々ありますけど、
やっぱり日本人にとって一番恐ろしいのは
怪談映画じゃないかと思うんですよね。
少なくとも僕はそうです。
おどろおどろしい雰囲気が特に怖いですねぇ。
『四谷怪談』といえば今まで様々な映画が作られていますが、
その中でもダントツで最高傑作なのが、
この中川信夫監督の『東海道四谷怪談』です。
監督、スタッフ、キャストと全員が
最高のテンションで作り上げた恐ろしい程の名作です。

浪人・民谷伊右衛門はお岩との結婚を許してもらえず、
お岩の父親を斬り殺してしまいます。
偶然現場を目撃した小悪党の直助は
伊右衛門の弱みを握ったのをいいことに彼を利用。
利益の為に伊右衛門を
裕福な武士の娘お梅に婿入りさせようと画策します。
直助は伊右衛門に、
婿入りの邪魔となるお岩を毒殺するように唆し、
彼はそれを実行するが…。

冒頭の惨殺シーンがワンカットで撮られているところから、
早速鳥肌が立ちます。
ワイヤーでゆっくりと動くカメラ。
そして歌舞伎調の重厚な音楽。
いきなり引き込まれます。
前半の長いカットと後半の短いカットのバランスが絶妙で、
畳の部屋が一瞬だけ隠亡掘(お岩を沈めた場所)に変わる
直助惨殺シーンなんか凄いです。
有名な戸板返しの場面や、
ラストの仏壇が遠ざかっていくシーン等、
映像としての怖さ、美しさがかなり詰まっています。
特に後半お岩が死んでからの怖さは半端ではありません。
名優・天知茂が優柔不断な伊右衛門を見事に演じきり、
お岩役の若杉嘉津子が美しくも怖ろしい。
役者・スタッフが最高の個性を見せていて、
これは本当に大傑作と呼べるホラー映画だと思います。
恐ろしさの中にもカメラワーク、
音楽等の懲り方に美学さえ感じます。
蒸し暑いこの季節に観ると一層怖ろしさが増しますよ。

観る前には必ずトイレに行っておきましょう!
2007.08.10 映画 009
邪願霊 (1988)


今やウザい程大量にレンタル屋に並んでいるジャパニーズ・ホラー。
最近のほとんどの作品は廃れていますが、
ブームのきっかけとなった名作『女優霊』以前の1988年に
ここまで上質なホラー作品が作られているとは驚きです。
近所の古本屋のビデオコーナーにポンと置いてあり、
250円とくれば勿論買いでしょう!
所謂「長い黒髪で白い服を着た女」で怖がらせようとする
しょぼい邦画が蔓延する今(大分減ってきたかな笑)、
古い作品でこういったホラーに出会えたことは嬉しい限りです。

アイドルのプロモーション作戦を追跡するうち、
不可解な出来事や事故が続出したため
真相究明に乗り出したテレビ取材班。
どうやらアイドルの新曲に問題がありそうな感じです。
そして遂にカメラが捉えたものは!

内容だけ読むと何だかよくあるホラー映画かなと思いますが、
ドキュメンタリー風のところがかなりきっちりしていていいんです。
番組スタッフ役の竹中直人なんて本当に後姿しか出てこないし、
インタビュー映像とかでも普通に噛んだりしてるし。
この姿勢を崩さなかったところがよかったんじゃないでしょうかね。
古いからなのか画質が悪いのも逆にリアリティがあって、
ドキュメンタリーっぽく撮っているのは分かっていても、
引き込まれます。
劇中アイドルが歌う曲『ラヴ・クラフト』(これは確信犯でしょう)も、
何だか変な雰囲気だし嫌ぁな感じがしてなりません。
重要なホラー的要素もばっちり押さえてあって、
微妙な惜しげのなさがかなりツボでした。
いい作品に出会えて本当によかったです。
邦画はやっぱり掘り下げ甲斐がありますな。
夏のホラー祭2007はまだまだ続きます!
とにかく、暑いですね。
何か年々暑くなってるような気がするんですけど。
確実に今年は去年より暑い。
そういえば、
先日代々木公園で彼女のフリマを手伝ってきましたが、
いやぁ、ひどい暑さ。
思わず昼に引き上げましたよ。
でも全部売れてよかった!
昼からビールを呑みまくりですわ。
う~ん自由。
オーガニック万歳。

伊島りすとの『ジュリエット』を読み終えました。


流石、日本ホラー小説大賞受賞作品。
よく練られた展開と、文章力が凄い!
比喩も的確な感じでどんどん引き込まれます。
日本独特のじめじめした表現と、
それでいて幻想的な雰囲気がいいです。
何気に正統なホラー小説かもしれませんね。
「思い出」がひとり歩きをするというテーマは
恐怖と悲しみを同時に読者に与えてくれます。
お薦めです!
次は夢野久作さんの短編集を読むぞ~。
2007.08.02 漫画 008
楳図かずお 『神の左手悪魔の右手』 小学館 全6巻
kaminohidarite_akumanomigite.jpg

最近、例の楳図邸の件で話題の大先生の名作の中からの紹介です。
僕はこの作品が楳図さんとの出会いなんですが、
そりゃもう度肝抜かれましたよ。
永遠に語り継がれるべき傑作で、
スプラッタ描写にこだわりつつも
夢と現実の境目がぐちゃぐちゃになるような練られた構成とか、
主人公が得意の少年というのも一層恐怖心を煽ります。
ホラー漫画の頂点と言っても過言ではありません!
僕がホラー漫画にどっぷり浸かってしまったのも
この作品の影響が大いにあると思います。

小学生の想君は、
夢を現実に変えるという不思議な力を持っているんですが、
自分では全く気付きません。
いつもお姉ちゃんにべったりでかなりの怖がり。
想君の周りでは次々に奇怪なことが起こり、
それに振り回されながらも
特殊な能力を生かして事件に立ち向かう姿を描きます。

1ページ目から、
眼からハサミが飛び出るという超スプラッタ描写!
いきなりワケが分からないまま物語に引き込まれます。
そして謎が謎を呼ぶ展開が素晴らしい。
また楳図さんの画って、
失礼かもしれませんが、
躍動感がなさそうなところが逆にいいんですよね。
同じ画で段々アップになっていくコマ使いなんか本当凄くて、
恐ろしさが増します。
ある意味映画的ですよね。
この作品はさっきも書いたように、
楳図さんの漫画の中でもかなりスプラッタ色が強いのですが、
ただ単にグロい本じゃありません。
『神の左手悪魔の右手』というタイトルが示すように、
主人公・想君の秘密が徐々に明らかになっていくところや、
その能力の出し所がドラマチックでいいんです。
また、優しい人間の顔が段々鬼のような形相に変わっていく場面、
楳図さんの画力の高さを思い知らされます。
20世紀最狂の恐怖漫画を是非とも体験してみて下さい!